エレベーター



 男がいた。

 スーツを着た男は、エレベーターに乗り込んだ。

「イラッシャイマセ。ナンカイデゴザイマスカ」

「地下、お願いします」

「カシコマリマシタ」

 エレベーターは二時間ほど下りつづけた。

 チャイムが鳴った。

「オツカレサマデシタ。チカ120カイ、マカイデゴザイマス」

 扉が開いた。

 目の前には、赤い空と、ひび割れた大地、枯れた植物の広がる世界があった。

 男は歩き出した。

 五分ほど進むと、地下への階段があった。

 男は十分ほどかけて階段を下りた。

 大きな扉があった。ノックして男は中に入った。

「失礼します。株式会社銀十字社でございます」

 男の目の前には、三メートルほどの、赤い肌を持つ巨漢の姿があった。巨漢の顔には、ねじれた角が生えていた。

「本日は納品の確認に参りました。大剣5670本、大斧21500本、大槍1200本、大鎌4500本。

 発注数通りの商品は到着しておりましたか?」

「うむ」

「それでは、こちらに確認のサインか印鑑をお願いします」

 巨漢は、サイズに見合った巨大なハンコを男の書類に押した。

 『魔王』と捺印された。

「ありがとうございました。今後とも銀十字社をよろしくお願い致します」

 男は頭をさげて、部屋を出た。

 行きと同じ時間をかけて、男は再びエレベーターに乗り込んだ。

「イラッシャイマセ。ナンカイデゴザイマスカ」

「屋上、お願いします」

「カシコマリマシタ」

 エレベーターは三時間ほど上りつづけた。

 チャイムが鳴った。

「オツカレサマデシタ。120カイ、シンカイデゴザイマス」

 扉が開いた。

 目の前には、青い空と、豊かな大地、広大な森林の広がる世界があった。

 男は歩き出した。

 五分ほど進むと、空へ続く階段があった。

 男は十分ほどかけて階段を登った。

 小さな扉があった。ノックして男は中に入った。

「失礼します。株式会社銀十字社でございます」

 男の目の前には、三センチほどの、白い肌をした小人の姿があった。小人の背中には、白い羽が生えていた。

「本日は納品の確認に参りました。拳銃5670丁、マシンガン21500丁、ライフル1200丁、ガトリングガン4500丁。

 発注数通りの商品は到着しておりましたか?」

「うむ」

「それでは、こちらに確認のサインか印鑑をお願いします」

 小人は、サイズに見合った小さなハンコを男の種類に押した。

 『神』と捺印された。

「ありがとうございました。今後とも銀十字社をよろしくお願い致します」

 男は頭をさげて、部屋を出た。

 行きと同じ時間をかけて、男は再びエレベーターに乗り込んだ。

「イラッシャイマセ。ナンカイデゴザイマスカ」

「地上、お願いします」

「カシコマリマシタ」

 エレベーターは二時間ほど下りつづけた。

 チャイムが鳴った。

「オツカレサマデシタ。1カイ、ニンゲンカイデゴザイマス」

 扉が開いた。

 目の前には、濁った空と、埋め立てられた大地、巨大なビルの広がる世界があった。

 男は歩き出した。

 五分ほど進むと、自宅へと続く階段があった。

 男は十分ほどかけて階段を上った。

 普通の扉があった。

「ただいま」

 男は仕事を終えた。

 

 


エレベーターって外界から閉ざされた神秘空間だと思うのです。
 
だからこんなファンシーな場所に続いていてもおかしくないですよね。







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