隣を歩いていた彼女が、こちらを見ている。
「どういうときに幸せ、って感じる?」
俺はすこし考えてこういった。
「フツーに生活できてるのが一番幸せじゃねぇ? そういうあたりまえが一番大事だろ」
大局的なものの見方だな、と俺は自分の答えに自画自賛した。
「……んー」
だが彼女はむくれた。半眼でこちらを睨んでくる。
「そーゆー答えを期待したんじゃないんだけど」
俺は顔をしかめる。
「んじゃあなに言えばよかったんだよ」
俺はそう聞くと、彼女は唇を尖らせて、
「あたしといるときが一番幸せ、とかでしょフツー」
その言葉に、俺は驚愕してしまった。
「……あー、お前って相当オトメちっくだな。いまどき珍しいぞ」
ぽつりと呟いた言葉に、彼女は「うるさい」とか言いながら俺の頭をバッグで殴った。
ラブコメな会話のリハビリとして。
しかし何事においても学生のシーンは書きやすい。
気張らなくていいからだろうか。