それしか聞こえない空間。
生と死が等しくあるそこに、俺は居た。
「糞ッ、弾だ。次をよこせ!」
舌打ちしながら俺は予備弾倉を受け取ると、引き金を引く。銃身が加熱しすぎないように、三連射で引き金を緩めながら弾幕をつくる。
「リンッ、本部にはまだ繋がらないのかッ!」
カイは俺と同じように、塹壕からアサルトライフルを速射している。
「クソッ、早く応答しろよ!」
リンは苛立たしげに無線をコールし続ける。
相手の数が多すぎる。わずか四人の抵抗では、相手の士気を殺ぐことすらできやしない。絶望という二文字を何度も頭をよぎるが、それでも抵抗の意思を緩めない。
カキン、という空打ちの音。俺は即座に弾倉を外す。
「次ッ!」
シキから弾倉を受け取り、再び銃撃を開始する。
カイが左手で連射を続けながら、右手で手榴弾を投擲する。爆発音が響くが、相手の銃撃は一向に止まない。
「シキッ、弾は残りいくつだ!?」
「手榴弾は四つ。予備弾倉は十二です」
「糞ッ糞ッ!!」
何度も何度も舌打ちしながら、カイは撃ち続ける。
夢も希望もないとはこのことだ。そう思いながらも、俺は諦めない。諦めたらそこで全てが終わるからだ。
「繋がった!!」
その声は、まさに待ち望んだ希望だった。
「こちらB小隊、潜伏していた敵部隊と交戦中、状況は著しく劣勢、援軍を、援軍を要求するッ!」
「みんな、踏ん張れ。正念場だッ!!」
俺の一喝に、カイが吠える。
「おおおおおおらあああああぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!」
それに答えるように弾丸が飛ぶ。俺も負けじと弾丸を放つ。
「ーーー!!」
ガチャ、という音。
俺が振り向くと、そこにはヘッドセットを落としたリンの、愕然とした表情があった。
俺の胸に、最悪の想像が過ぎる。
「リンッ、どうしたんだ!」
リンは、完全に生気の抜けた声で、こう言った。
「……援軍など必要ない。貴様らは囮だ。精々足掻け……」
「……………」
俺達の手が止まる。
それでも、弾丸が無常にこちらへと飛んでくる。
「……ッザケんなよ、糞がぁぁぁぁッ!!!」
血を吐くような声と共に、地面を殴りつけるカイ。
「…………軍曹……」
泣きそうな表情で俺を見るシキ。
本当に、夢も希望も無くなった。
だが、それでも。
「…………全員、弾倉を携帯しろ」
三人が、俺を見る。
「シキ、榴弾は四つだったな」
「…はい」
「同時に投擲し煙幕を張る。それから四方に散り、この場を離脱する。生き残るにはそれしかない」
カイが再び地面を殴る。
「エルッ、お前この状況が分かってるのか。どこにそんな隙間があるってんだよ!!」
「死にたければここに残れッッッ!!!」
塹壕の中に響き渡る声に、カイが押し黙る。
「いいか、諦めたらそこで死ぬ。俺たちは何度もそれを見てきた。だが諦めるな。諦めたらそこで終わりなんだ。いいな。俺たちは生き残るんだ」
噛みしめるように、自分に言い聞かせるように俺は言う。
「分かったか!!」
「サーッ!!」
敬礼を返す三人。俺も力強く敬礼を返す。
「よし、行くぞッ!!」
俺の合図で一斉に安全ピンを引き抜く。そして三秒後に一斉に手榴弾を投擲した。
爆音と土煙が、俺たちを覆い隠す。
「あああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」
「おい、シャーペンの芯を全部出して何してるんだよ」
「戦争について考えていたんだ」
うーん、馬鹿です。大馬鹿です。
ちなみにシャーペンの芯を残弾をかけております。
なんかつながりが分かりにくいような。
というか途中から違う話になっているような。ああ