D-RPG第四話 「心友」



 ガアアァァン

 

 タケシの突き破った扉が派手な音と立てて開く。

 開かれた僕らの視界には、玉座がある。

 そしてそこには、傲岸不遜といった表情でこちらを見ている一人の男。

「怒羅江門!!」

 僕はその名を呼ぶ。

 謁見の間に鳴り響いた声は、しっかりと届いていた。

 『怒羅江門(DORAEMON)』は口元を吊り上げて笑う。

「待ってたよ……ノビタくん」

 ゆっくりと怒羅江門は玉座から立ち上がり、こちらへと近づいてくる。その足が、前へと進むたびに、内臓がきしむような圧力が襲う。

 タケシがそれを振り払うように叫ぶ。

「怒羅江門ッ、いい加減目を覚ませよッ!!」

「ボクは夢を見ないよ……機械だからね…」

 スネオが叫ぶ。

「怒羅江門ッ、何で殺しあうんだ!!」

「闘争に理由が必要かい……」

 シズカが叫ぶ。

「怒羅ちゃんっ、私たちは友達でしょう!」

 怒羅江門の歩みが止まる。

 彼は困ったように顔をすくめて、こういった。

「どうして幻想にしがみつくんだい…?」

 シズカの表情が凍った。

 

 怒羅江門の指先が一本立てられる。

「ボクは君たちに一つの大きな嘘をついている。何だと思う?」

 全員が沈黙する。ただ一人、怒羅江門だけが言葉を続けている。

「いいかい、ボクは未来からやってきた。だが、そこにいるノビタくんのためじゃない」

「………」

「ボクのマスターはあくまでセワシくんだ。そしてボクの存在の全てはセワシくんの為にあるんだよ」

 

 

「……僕を更正させる、ということが……嘘なんだね」

 ひどく、残酷な真実。

 僕の告げた言葉は、仲間達の時間を止めた。

 

 

 パチパチ

「正解だよ、ノビタくん」

 気の無い拍手と共に聞こえた怒羅江門の声。

「ボクは君を殺すために未来から来た。後世のことを考えて、心優しいマスターは、この劣性遺伝子を抹殺することにしたのさ。ノビタ、君という人間の劣悪種をね……」

 その言葉はひどく僕の耳に響いて。

 その言葉はひどく僕の心を裂いて。

 

 その言葉は、僕らの決別を意味していた。

 

 

「うううおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 タケシが石床を砕くように駆け、怒羅江門に戦斧を振り下ろす。人間を軽く両断できるその一撃は、怒羅江門に片手で止められていた。

「怒羅ァァッッッ!!」

 叩きつけた左拳はタケシの戦斧を粉々に砕き、驚愕する間も与えず繰り出した右拳は、タケシを石床に埋め込んだ。

 

「嗚呼アアアァァァァ!!!」

 スネオが雄叫びと共に数十本のナイフを怒羅江門に降り注がせる。

「怒羅怒羅怒羅怒羅怒羅怒羅怒羅怒羅ーーーー!!!!」

 拳の弾幕がナイフの全てを叩き落す。

「ッアアア!!!」

 接近しつつワイヤーを繰り出すスネオ。触れれば肉を裂く無数の糸を、怒羅江門は軽々とかわしつつスネオに接近していく。

 だがスネオの顔に浮かんだのは、焦りではなく笑いだった。

 スネオが左手を勢いよく引くと、極細の鋼線で繋がっていたナイフが怒羅江門の体に巻きつく。完全に動きを封じた。

「もらったァァァァ!!」

 ありったけの爆薬を投擲するスネオ。轟音と炎に包まれ、怒羅江門の姿が消えた。

 勝利の笑みを浮かべるはずのスネオの顔が凍りつく。

「……シークレットウェポン『縮尺自在』 惜しかったね…」

 背後から拳の乱打を食らい、スネオが壁へと吹き飛ぶ。

 

「タケシさん、スネオさんッ!!」

 治療に駆け寄ろうとしたシズカの眼前に、怒羅江門が立ちふさがる。

 絶句するシズカに、怒羅江門はにっこりと微笑んだ。

「それは卑怯だよ、シズカちゃん…」

 首筋に優しく当てた怒羅江門の指は、シズカの頚動脈を圧迫して、気絶させた。

 

 

 三人が倒れた謁見の間。

 僕はゆっくりと銃を折る。弾丸が排出された。

「……殺さなかったんだね、怒羅江門……」

 右腰から強装弾を取り出し、弾倉に詰めなおす。

「最後の決着は、キミと二人でと思ってね……」

 ガコンと両拳を打ち合わせる怒羅江門。

 僕はそれと同時に銃身を戻して、再装填を終える。

 

 

「……いままで楽しかったよ……怒羅江門……」

「ボクもだよ、ノビタくん………」

 

 

 ひどく優しい言葉。

 それが僕らの友情の最後だった。

 

 

「怒羅江モォォォォォォォォォォォォンッッ!!!」

「ノビタクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッッ!!!」

 

 


D-RPG四話。
熱いです。激しいです。次がラストです。
 
いま見返すとなんて王道ストーリーなんだ。







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