李太郎・地獄編 〜スモモタロウ ジゴクヘン〜



 むかしむかし。しいて言うなら1000年くらい前。

 山のふもとに老夫婦が住んでいました。

 

 おじいさんが山へ伐採へ行っているとき、おばあさんは川で服のしみを落としていました。すると上流から巨大なスモモが流れてきました。多分150センチくらいあります。

「あらまぁ、りっぱなすももねぇ」

 そう言うとおばあさんは川へ飛び込み、スモモを陸へと引っ張りあげました。ワイルドです。

 おばあさんはそれを担いで、家まで5キロの道のりをスキップして帰りました。

 

 

 家に帰ってきたおじいさんは、スモモを見てとても喜びました。思わず唾を飲み込みます。

「さてさて、それではきりわけましょうかね」

 おじいさんはごつごつと刃こぼれした両手斧を持ってくると、年齢を感じさせない力で大きく斧を振りかぶりました。

 にんまりと笑った後、おじいさんは斧を勢いよく振り下ろしました。

 しかし、斧の刃はスモモを両断できずに、半ばで止まっていました。

 おじいさんとおばあさんが不思議そうにスモモを見ていると、スモモがぱかっと二つに割れました。すると中から出てきたのは、斧の刃を小さな手で真剣白刃取りしている子供でした。

「どうも、すももたろうといいます。いきなりでなんなんですけど、おじいさん、おのからちからをぬいてほしいんですが」

 見た目は赤ん坊なのに、李太郎は立派に言葉を喋っています。しかしおじいさんは、斧に力を込めたまま、あたりをきょろきょろと見回しています。

「おばあさん、なにかいいましたかのぉ」

「いいえ、あたしはなにもいっておりませんよ」

 どうやらおじいさんはボケたフリをしているようです。

 それもそのはず、この老夫婦は子供を食べる悪党なのです。おばあさんは、なかに李太郎が入っていることを知って、ここに運んできたのです。

 これには李太郎も困りました。もう腕が痺れています。

「おじいさん、おばあさん。ほうしゅうははらいますから、わたしをたすけてくれませんか?」

「おばあさんや、そろそろなべはにたったかね?」

「はい、じゅんびはととのっていますよ」

 李太郎は交渉しますが、老夫婦は聞き入れてくれません。李太郎は大きく溜息をつきました。

「しかたないですね」

 李太郎が足元にあるスイッチを踏むと、割れたスモモの内部から機関銃が飛び出してきました。

 おじいさんが気づいたときにはもう遅く、おじいさんは蜂の巣になってしまいました。おじいさんが崩れ落ちると、おばあさんは悲鳴を上げて逃げようとします。李太郎は斧の柄をしっかりと握ると、斧を投擲しました。回転しながら飛んでいった斧は、おばあさんの首をすぱんと両断しました。おばあさんも血を噴出しながら倒れました。

 李太郎はもう一度、大きく溜息をつきます。

「これでよんかいめか。つぎこそはふつうのひとのところにいきたいもんだなぁ」

 李太郎はスモモの切断面にあったスイッチを押します。するとスモモは元の形に復元して、150センチの巨大スモモに戻りました。

 するとスモモは光を放ち、青い粒子に包まれたと思うと、忽然と姿を消してしまいました。

 後には、穴だらけになったおじいさんと、首の離れたおばあさんが残りました。

 

 


唐突に思いついた暗黒冗談昔話。
なんだか無意味にヴァイオレンス。それもまた良し。
 
スモモ型の時空間転移装置……乗りたい。






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